私は、遊ばせている土地を持っていまして、これを人に貸そうと思っています。新しい借地借家法による定期借地権という制度に注目していますが、一般定期借地権定契約を締結するには、どういう契約条項にすればよいのか条項の問題点を教えて下さい。


一般定期借地権設定契約は、必ずしも公正証書にすることは必要とされていませんが、存続期間が長期であることなどから後日の紛争を防止するためには、公正証書によって契約書を作成するのが適切です。
 以下、公正証書による契約書を作成する場合の条項の問題点を説明します。
第一条【借地権の設定】
* 本契約が借地借家法22条に定める一般定期借地権であることを明示します。そして、契約の更新及び建物の築造による存続期間の延長がないこと、また、借地権者は、建物の買取りを請求することができないものとすることを規定します。
第2条【建物の種類等】
* 借地上の建物の種類、構造、用途を具体的に記載します。
第3条【借地期間】
* 50年以上の借地期間を定めることが必要です。
第4条【賃料】
* 実務では、賃料を半年払い(前払い)、年払い(前払い)とするものが多い。
また賃料改定条項についても、自動増額の特約をするものが多い。
壱 賃料は、年毎に次の方式により改訂するものとする。
改賃料=(従前の支払賃料-前回改定時公租公課)×変動率+賃料改定時の
本件土地にかかる公租公課
変動率・・総務庁統計局の消費者物価指数(総合指数)に従い決定する。
弐 経済社会情勢に大幅な変動があり、前項の改定賃料が明らかに不当となった
ときは、前項の定めにかかわらず、賃料を改定するものとする。
参 前項の賃料改定について、当事者間に協議が調わないときは、当事者は調停手続により誠意をもって協議解決するものとする。
第5条【建物の増改築等】
* 「借地権者が、建物を増改築(再築を含む。)しようとするときは、あらかじめ、借地権設定者に通知しなければならない。」と規定します。借地権設定者の、承諾を要する旨を定めることも考えられますが、実務上はあまり見あたりません。
第6条【譲渡、転貸の禁止】
* 「借地権者は、借地建設定者の書面による承諾なしに、本件借地権を譲渡し又は本件土地を転貸してはならない」と規定します。
第7条【契約の解除】
 借地権設定者は、借地権者が、次の各号の一に該当する行為をしたときは、本契約を解除することができる。  
(1) 第2条に違反し、本件土地を使用したとき
(2) 第4条の賃料の支払いを3か月分以上怠ったとき
(3) 第5条に違反し、通知を行うことなく、建物を増改築したとき
(4) 第6条に違反し、無断で本件借地権の譲渡、転貸をしたとき
(5) その他、借地権者に本件借地契約を継続し難い重大な背信行為があったとき
第8条【現状回復義務等】
1 本借地件権の存続期間が満了した場合又は第7条により本件借地契約が解除された場合は、借地権者は、借地権設定者に対し、本件土地に存する建物その他の工作物を、収去し、本件土地を現状に復して、更地で返還しなければならない。
2 本件借地権が存続期間の満了により消滅する場合において、借地権者は借地権設定者に対し、期間満了の1年前までに建物の取壊し及び建物貸借人の明渡し等本件土地の明渡しに必要な事項を書面により報告しなければならない。
3 第1項に定める本件土地の明渡しが遅延した場合の違約金は本件土地賃料の3倍額に相当する額とする。
第9条【登記】
 借地権者及び借地権設定者は、本件借地契約を締結した後、速やかに本件土地についてこの契約に定める一般定期借地権設定の登記をするものとする。
* それに加え、登記費用の負担条件を設けます。例えば、「登記費用は借地権者及び借地権設定者が折半する」と定めるものが多い。
第○条【管轄裁判所】
 本件借地契約に関する紛争については、本件土地の所在地管轄する地方裁判所を第一審の管轄裁判所とする。
 以上が、建設省の定期借地方式の普及・活用方策研究会の公示した「一般定期借地権設定契約約款(案)」の各条項を説明したものですが、実務では上記約款(案) 以外に、次のような条項が問題とされています。
第○条【保証金預託と抵当権設定】
* 建物分譲業者の仲介した一般定期借地権設定契約には、ほとんど次の条項が加えられます。
 この条項は、借地権者が借地権設定者に数千万円の無利息の保証金を預託し、借地権者に右保証金相当額を金融機関より借り受け、それを附担保債権とする低当権を借地権設定の土地に設定することを内容とするものです。借地権設定者がその所有地に低当権設定を嫌う場合には、これらの条件はつけられません。その場合には、借地権者が、保証金の借地期間無利息で利用できる利益を賃料に上乗せして賃料額を定めています。  
壱 乙は甲に対し賃料、損害金その他本契約上生ずる乙の甲に対する一切に債務を担保するため、保証金として金○○○○円也を後記のとおり預託し、甲はこれを受託した。
(1) 平成○年○月○日   金○○○○円也
(2) 本件建物建築着工時  金○○○○円也
弐 前項の保証金は無利息とし、本件契約が終了したあと第8条の現状回復が完了するのと引換えに、乙の甲に対する残存債務を差し引いた残額を返還する。
参 本条の保証金につき、甲は、乙の甲に対する将来の保証金返還請求権を担保するため、本件土地に低当権を設定することを承諾した。但し、その登記費用は、乙の 負担とする。
四 前項の低当権設定登記は、乙が住宅金融公所等の金融機関の融資を受ける場合、金融機関の本件土地上建物に対する低当権設定登記の後に行われるものとし、金 融機関の抵当権設定登記が完了するまでは、登記留保とすることに乙は、合意した。
五 乙は本条の規定による保証金返還請求権を、甲の書面による承諾がない限り、譲渡又は質入れその他の担保等に提供してはならない。
(注)甲=借地権設定者・乙=借地権者
第○条【権利金又は礼金】
* 借地権者から借地権設定者に権利金又は礼金が交付されるときは、次の条項が加えられます。
壱 乙は甲に対し、本件借地権設定に当たり礼金として、金○百万円(消費税を含 む)を支払うものとする。
 尚、この金員は、平成○年○月○日に甲が乙より証拠金として預け入れた金○  百万を平成○年○月○日付で礼金に充当させるものとする。
弐  前項の礼金は返還しないものとする。
  (注)甲=借地権設定者・乙=借地権者
     権利金の場合は、礼金のところを権利金に改め当てはめればよい。
第○条【敷金】
* 借地権者が借地権設定者に敷金を交付したときには、次ぎの条項が加えられます。  
壱 借地権者は、借地権設定者に対し、本件借地権の設定に当たり、敷金として金○百万円を支払い、借地権設定者はこれを受領した。 弐 前項の敷金には利息を付さない。 参 壱項の敷金は、借地権設定者は借地権者が本件借地契約により負担する賃料、損害金等一切の債務を控除した残額を、本件借地契約が終了し借地権者が土地を返 還した後、遅滞なく借地権者に返還する。
第○条【底地の譲渡】
* 借地権設定者が賃貸土地を他に譲渡する場合には、借地権者の地位を保護するために、次の条項が加えられるのが通常です。
壱 甲が本件土地を有償で乙以外の第三者に譲渡しようとする場合には、事前に
乙に通知し、乙に確認を求めるものとする。
弐 前項の土地譲渡が、行われた場合には、甲は乙に対する保証金返還債務を本件土地譲受人に承継させる手続きを行う。
参 前項の規定にかかわらず、甲が本件土地を国又は地方公共団体に譲渡するときは、甲は保証金を乙に全額返還するものとする。尚、返還期間は甲の返還の申出があった日から壱週間とし、乙は甲から保証金の返還を受けた後速やかに、第○条○ 項の抵当権の抹消登記手続きを行わなければならない。
四 甲は理由なく故意に、指定暴力団関係者等、社会通念上著しく乙に不利益を与えるもの、又は著しく迷惑をかける者に本件土地の所有権を売却しないことを確約した。
(注)甲=借地権設定者・乙=借地権者
 弐及び参項は、借地権者が借地権設定者に保証金を預託している場合の対応条  項です。
第○条【建物の賃貸借に関する措置】
* 定期借地権者は、50年以上の土地利用権をもつため、その地上の自己所有の建物を第三者に賃貸しすることが予想されるので、借地権設定者としては、右期間満了後の土地の返還を確実にするため、本条項が入れられるのが通常です。これは第8条(現状回復義務等)の条項を補強するものです。
壱 借地権者が本件建物を第三者に賃貸する場合は、事前に借地権設定者に通知するものとし、その第三者と締結する建物賃貸借契約書において、第○条に記載した本 件期間満了により本件建物が取り壊されると同時に建物賃貸借契約が終了する旨を 定めなければならない。
弐 借地権設定者は、借地権者から本件建物を賃借した前項の第三者に対し、本件契約が終了する壱年前までに本件契約の終了日を自ら通知することができる。 参 借地権者は、本件建物の賃借人が甲に損害を与える行為をなしにした場合は、本件建物の賃借人と連帯して、その損害賠償の責務を負うものとする。
第○条【立退料】
 借地権者は、本件土地返還に当たり、立退料、精算金等の名目のいかんを問わず、金銭の要求を一切しない。
第○条【契約の費用】
 本件借地契約書作成費用、公正証書作成嘱託の費用、仲介手数料等本件借地契約の締結に要する費用は、借地権者及び借地権設定者が折半して負担する。
第○条【その他】
 本契約に疑義のある事項及びこの契約に定めのない事項については、当事者双方の協議のうえ定める。
第○条【強制執行認諾】
 借地権者及び借地権設定者は、本契約中の金銭債務の履行を怠ったときには、直ちに強制執行に服する旨陳述した。
* この条項により賃料の不払い、保証金の不返還があると、公正証書が債務名義となり裁判をしなくても執行文付与が可能となります。