私の夫は、自動車を運転していたところ、道路に穴があいていて、そこに車が落ちて怪我をして現在入院中です。その道路は、国道です。こんな場合、運が悪かったと諦めるべきですか。


直接加害者がいないので、損害賠償を請求するのに誰を相手方にすればいいのか、また損害賠償請求すること自体できるのか、わからないと思われるのは、無理がありません。
 しかし、あなたのご主人は、損害賠償を請求することができます。その相手は、道路を管理する責任を負っている者、すなわち道路管理者です。その道路は国道ですから、その管理者である国を国を相手として裁判をすることになります。
 国は、国道について、維持、修繕、管理の義務を負っています。道路に穴があいていれば、すみやかに修理するかあるいは道路が危険であることをわからせる設備をして災害が発生しないようにする義務があります。そこで、道路の管理について瑕疵があったために、他人に損害を生じたときは、国はこれを賠償する責任があります(国家賠償法2条)。
 損害賠償を認めた裁判例としては、仙台市の目抜き通りのコンクリート舗装道路に生じた直径1メートル、深さ10〜15センチの穴ぼこにモーターバイクの前輪が落ちて死亡した事件(仙台地裁昭35.9.6判決)が有名です。
 同種の事件で、昭和43年岐阜県飛騨川で、集中豪雨による土石流で、観光バスが川へ転落し、多数の死者を出した事故につき、裁判所は国道の管理に不備があったとして国に賠償を命じました(名古屋高判昭49.11.20高裁民集27巻6号395項)。