取引先のY株式会社の代表取締役Aが最近死亡しました。会社の登記簿謄本をみますと、取締役は3名です。  当社がY社を相手に裁判をするにはどうしたらよいでしょうか。 


株式会社の取締役は3人以上でなければなりません(商法255条)。従って、Y会社は、Aが死亡し、2人の取締役しかいないことになりますので、法律で定められた取締役の員数を欠いている状態です。
 このような場合、裁判所は、利害関係の請求によって一時取締役(仮取締役)を専任することができます。(商法258条2項)。同条文は、代表取締役に準用されています。(商法261条3項)。
 すなわち、仮取締役や仮代表取締役を選任してもらえます。これらの申請者は、株主、取締役、使用人会社債権者などの利害関係人です。
 申請先は、会社の本店所在地の地方裁判所です(非訟事件手続き法126条)。裁判所は、取締役及び監査役の陳述を聴いて、仮取締役及び仮代表取締役を選任する必要性について審理して決定します。選任されたときは、登記する必要があります。仮取締役及び仮代表取締役には、会社の負担で報酬を与えることができます。(非訟法132条の4第2項129条の3)。
 報酬の額は、裁判所が決定をもって定めます。後任の取締役などが短期間のうちに選任された場合であれば、小額ですみますが、反対に株主間で紛争があり、長期間代行者の地位にとどまざるを得ない場合は多額となります。貴社の取り得る手段として、他に特別代理人の選任方法があります。貴社とすれば、Y社に裁判をする件についてのみY社を代表するものを相手にすれば足りる場合、上記の仮代表取締役の選任の手続きは、まわりくどく、緊急の処理に間に合わないおそれがあります。そのため、特別代理人の選任を申請することができます。(民事訴訟法58条、56条)。
 裁判長は、適当な者を特別代理人に選任する命令を発します。普通は、当核会社に関係の深い者や弁護士を選任します。特別代理人には報酬を支払うのが通常です。実務では、特別代理人を選任するものが費用を予納し、特別代理人を選出した裁判長が特別代理人と会社との関係、事件の性質、難易その他の事情を考慮して支払うかどうか、その額はいくらにするかを決めているようです。