PL法における部品や原材料の製造業者の責任


 部品や原材料の製造業者の責任について、PL法では特別な規定があるとお聞きしましたが、その内容を説明して下さい。


 部品や原材料もそれ自体製造物ですから、部品や原材料の欠陥によって最終製品に欠陥が生じ、他人の生命、身体又は財産を侵害したときは、部品や原材料の製造業者はそれによって生じた損害を賠償する責任を負います。その場合、被害者は最終製品の製造業者を相手として製造物責任を追求することも出来ますが、その部品又は原材料の製造業者に対しても製造物責任を追求できます。両者は連帯責任の関係になります。  しかし、部品や原材料の製造業者にPL法の責任を常に負わせるには妥当でない場合があります。なぜならば、部品や原材料の製造業者は、最終部品の製造業者が行った設計通りに部品や原材料を製造しなければならない場合があって、そのような場合にまで部品や原材料の製造業者に責任を負わせるのは酷だからです。
 そこで、法第4条2項では、部品製造業者の抗弁を規定しています。この規定によって、親会社の設計指示に従って部品を製造していた下請業者は、PL法上の責任を免除されることのなります。この抗弁が認められると、最終製品の製造業者である親会社だけが、製造物責任を負うことになります。
 部品製造業者の抗弁が認められるためには、以下の3つの要件を充たすことが必要です。
 第1は「当該製造物が他の製造物の部品又は原材料として使用された場合」であることです。これを部品性の要件といっています。その製造物が他の製造物の部品又は原材料に当たるかについては、その製造物の製造業者が部品又は原材料として引渡したかどうかによるものではなく、他の製造物の部品又は原材料として実際に使用されたか否かにより判断されます。
 第2は、「その欠陥が専ら当該地の製造物の製造業者が行った設計に関する指示に従ったことにより生じ」たことです。これを設計指示従属性の要件といっています。ここでいう「設計に関する指示」とは、その部品又は原材料の形状又は構造につき、それを具体的に示して指示することをいいます。その場合の指示の形態については、設計図そのものである場合、構造を指定してくる場合、性能や仕様を指定してくる場合など製造物の特性により様々なケースが考えられ、具体的に設計図に限らず、その構造、材料、性能、仕様等の指定も含まれます。
 第3は、「その欠陥が生じたことにつき過失がないこと」です。これを無過失の要件といいます。
 その製造物の分野における平均的な製造業者の注意力からすれば、その製造物に欠陥が生じることが予見できたのに、よく注意をしなかったため、これを知らないまま、その製造又は加工を行った場合には過失を認められ、責任を免除されません。