PL法における因果関係


 自動車事故の原因が、運転者の猛スピード違反によってその場合に、自動車に構造上の欠陥があったとしたら、製造業者はPL法の責任を負わなければなりませんか。


 前問は、「発生事故」と「損害」との因果関係について述べましたが、本問は、「欠陥」と「発生事故」との因果関係の問題です。
 PL法に基づき、製造業者等に製造物責任を追求するには、発生事故の原因が、製造物の欠陥にあることが必要です。
 法3条が「欠陥により」と規定しているように、欠陥と発生事故との因果関係が必要です。
 製造物責任法は、前問の因果関係、本問の因果関係について、いずれも特別な規定をおいておりませんので、民法の規定によることになります(法第6条)。
 そこで、因果関係の主張、立証責任は、民法の原則により、製造物責任法を追求する側、すなわち被害者側にあります。一般に、被害者側は専門知識を有していないし、製造物に関するデーターを有していないので、因果関係の立証は大変困難です。そこで、PL法の立法過程で因果関係の存在を推定する規定を置くことが議論されました。その推定規定が置かれますと、被害者側が因果関係の存在を立証する必要はなく、製造業者側が因果関係が存在しないことを立証しなければなりません。しかし、今回のPL法では、結局推定規定は置くことにはなりませんでした。
 本問については、自動車の構造上の欠陥との間に因果関係がなく、専ら運転者の猛スピード違反が原因ですから、製造業者はPL法の責任を負いません。
 仮りに、自動車事故の原因がスピード違反もあるが、そもそも自動車に構造上の欠陥があったとした場合には、被害者側が自動車の欠陥と自動車事故との因果関係を立証すると、製造業者はPL法上の責任を免れません。