弁護士に事件の依頼をしたいのですが、知り合いは全くありません。どうしたら良いのでしょうか。また、いくらぐらい弁護士費用がかかるのでしょうか。弁護士に頼むと家屋敷をとられてしまうとも聞いたのですが、そんなにお金がかかるのですか。



 我々弁護士の法律事務所を訪れる依頼者は、飛び込み客はめったにいません。直接弁護士を知らない場合には、だれかの紹介で来所されます。親戚、知人、友人が知っている弁護士、あるいは勤務先(顧問会社を含む。)が知っている弁護士、という具合で紹介があります。弁護士の方でも、同窓会に出席したり、ライオンズクラブやロータリークラブ、あるいは経営者団体などに入会して、顧客層を拡張する努力をしています。したがって、弁護士を知るきっかけはいろんなところにあります。しかし、いろんなつながりを使っても弁護士を知らない場合には、金沢弁護士会(金沢法曹会館)に行くと、会員弁護士を紹介してくれます。県外の弁護士を紹介してほしい場合には、全国各地に弁護士会がありますので、そこへ紹介を依頼するか、あるいは地元の弁護士から紹介してもらうのがよいでしょう。
 次に、弁護士費用についてのお尋ねですが、まず最初に、弁護士に頼むと家屋敷がとられてしまう、ということはありませんのでご安心下さい。弁護士費用については、各弁護士会の定めた「報酬規程」をもとに算定しますが、ここでは金沢弁護士会の報酬規程に基づき説明します。
 弁護士報酬には、大きく分けて着手金と報酬金とがあります。着手金は、事件を依頼するときに支払うもので、報酬金は、依頼事件について依頼の目的を達したときに支払うものです。
 民事事件の着手金の算定方法は、事件の経済的利益の額に対するパーセントで決めます。後記の「民事事件の着手金報酬一覧表(抜粋)」を参照して下さい。売掛代金請求事件では、100万円の請求をする場合と、1000万円の請求をする場合とでは、経済的利益の額が違うので、着手金の金額は違って来ます。100万円の請求の場合は、着手金は標準で13万5000円で、1000万円の場合は標準で84万5000円です。但し、事件の難易、手数の繁簡などにより標準額の30パーセントの範囲で増減することが認められています。顧問会社からの依頼事件については、標準額の30パーセント減額した着手金とすることを顧問契約で定める例が多いと思います。もちろん、顧問料は別途毎月支払わなければなりません。
 民事事件の報酬金の算定方法は、事件処理により確保した経済的利益の価額に対するパーセントで決めます。先の100万円の売掛代金請求事件で、判決なり和解で、80万円の請求が認められた場合では、報酬金は標準で11万1000円で、1000万円の事件で500万円しか認められなかった場合には、報酬金は標準で49万5000円です。報酬金も着手金と同様30パーセントの範囲で増減できます。
 以上のとおり、民事事件の着手金と報酬金とは、経済的利益の額によって決められますが、大ざっぱに言えば、請求金額の10パーセントが着手金、さらに10パーセントが報酬金となり、民事事件を依頼して家屋敷が弁護士に取られてしまうことはないのです。
 刑事事件の着手金及び報酬金は、民事事件のように経済的利益の額を算定できませんので、後記の「刑事事件の着手金及び謝金」の表によって最低額が定められています。  この表では、最低額が定められていて、最高額はどれくらいになるのか不安に思われる方もおられるかも知れませんが、この表よりそんなに掛け離れた金額にはなりません。
 従って、刑事事件を依頼して弁護士に家屋敷を取られてしまうことはありません。
 弁護士報酬の定め方について、以上のほか、時間制つまり解決までに要した(または要する)時間を基準に定める場合もあります。欧米ではこの時間制が普及しているようですが、日本の弁護士はあまり時間制を採っていません。


民事事件の着手金・報酬金一覧表(抜粋)

経済的利益の
価格(万円)
標準額
(円)
増減許容額
(円)
50
100
200
300
400
500
600
700
800
900
1,000
75,000
135,000
235,000
335,000
415,000
495,000
565,000
635,000
705,000
775,000
845,000
52,500〜97,500
94,500〜175,500
164,500〜305,500
234,500〜435,500
290,500〜539,500
346,500〜643,500
395,500〜734,500
444,500〜825,500
493,500〜916,500
542,500〜1,007,500
591,500〜1,098,500



 私は、X会社の社長をしています。この度従業員が仕事中に交通事故を起こしてしまいました。従業員の居眠りが原因の事故でしたが会社Xには責任はないのでしょうか。従業員が事故を起こす度に会社が責任を負っていたら、会社は倒産してしまいます。会社が責任を負わない方法はありませんか。



 民法第715条に「域る事業のために他人を使用する者は、被用者が其の事業の執行につき第三者に加えた損害を賠償する責に任ず」と規定されています。従業員の仕事中の事故は、「事業の執行につき」という要件に当てはまりますので、X会社は民法第715条の不法行為責任を負います。従業員はもちろん直接の不法行為者として民法第709条によって責任を負いますが、会社も使用者責任を免れないのです。但し、社長のあなたが従業員の選任及び其の事業の監督につき相当の注意をしたときは、責任を負わなくてもよいことになっています。
 従業員が休暇中に旅行先で交通事故を起こした場合には「其の事業の執行につき」という要件に該当しませんので、X会社には責任はありません。



 商法が改正されて株式会社の資本金は1000万円以上、有限会社のそれは300万円以上となったと聞いたのですが、いつ改正になったのですか。当社は資本金500万円の株式会社ですが、どうしたらよいでしょうか。このままの資本金にしておくとどうなるのでしょうか。



平成2年に商法が改正され、株式会社の資本の額は1000万円を下ることができない(商法168条4)となり、有限会社の資本の総額は300万円を下ることができない(有限会社法第9条)となりました。この改正された法律は、平成3年4月1日から施行されています。
 従って、貴社は資本金500万円ですから、この改正商法に違反していると思われるかも知れませんが、ご安心下さい。法律が改正されてもすぐそれを適用されますとこれまでの秩序が混乱します。そこで、法律を改正する場合に一定の猶予期間を設けています。この法律施行に際し、現に存する株式会社で資本の額が1000万円に満たないものについては、この法律の施行後5年間は適用しないことになっています(改正附則5条・)。この法律の施行された平成3年4月1日から5年間、つまり平成8年3月末まで、資本金500万円の株式会社はそのままにしておいてよいことになります。
 この5年間の猶予期間内に、資本金の額を1000万円以上に変更するか、又は有限会社、合名会社若しくは合資会社に組織を変更するしなければなりません。これらの変更登記をしないと、その株式会社は、解散したものとみなされますのでご注意下さい。