根抵当権設定契約


それでは、当社とY銀行とで根抵当権設定契約を締結する場合、どんな取決めが必要でしょうか。


(1)まず、根抵当権設定契約の当事者ですが、根抵当権を取得する者と根抵当権の負担を設定する者とが合意の当事者です。債務者が自分の負担する債務のために設定する場合が多いのですが、第三者(物上根保証人)が設定して他人の債務のために利用させることもあります。例えば、X社の債務のために、X社代表取締役A個人所有の不動産に根抵当権を設定することは実務でよくみられるところです。
(2)次に、被担保債権の範囲の限定が必要です。X社とY銀行との間に生ずる一切の債権を担保するという、無制限の、いわゆる包括根抵当は認められません。担保される不特定債権の範囲を限定する原則的基準は二つあります。一つは、「債務者トノ特定ノ継続的取引契約ニ因リテ生ズルモノ」に限定することです。(民法398条の2第2項前段)。X社とY銀行の間で、当座貸越契約を締結し、その契約に基づいて生ずる債権と限定するのがこの例です。もう一つは、「債務者トノ一定ノ種類ノ取引ニ困リテ生ズルモノ」に限定することです(同条同項後段)。X社とY銀行との間の銀行取引から生ずる債権と限定するのがこの例です。
 例外として認められる限定基準は二つあります。1つは、「特定ノ原因ニ基キ債務者トノ間ニ継続シテ生ズル債権」を被担保債権として根抵当権を設定することです(同法398条ノ2第3項前段)。他の1つは、「手形上若シクハ小切手ノ請求権」です。(398条ノ2第3項後段)。X社振出、裏書または保証した手形・小切手が転々流通してZの所持となり、Y銀行がこれを割引き、その手形・小切手が不渡りとなったため、Y銀行がX社に対して手形上の債権を取得した場合には、Y銀行のX社に対する債権は、YX間の取引によって生じたものではありませんが、設定契約に明示することによって、なお、根抵当権の被担保債権とすることができます。いわゆる廻り手形を根抵当権の枠の中に入れることを認めているのです。
(3)次は極度額です。
 増減変動する不特定の債権を担保する限度額を定めることが必要です。従来の判例は極度額に債権極度額と元本極度額の二つの場合があるとしていましたが、新法は債権極度額一本にしました。従って、極度額に達するまでは、何年分の利息でもよく、また極度額を越えては、2年分の利息でも担保されません。すなわち、普通抵当の民法374条の適用はないのです。根抵当権は、極度額を枠として、それを越しては優先権がない代わり、その枠内では利息その他の取り決めを自由に行うことができるというのが、その特質だからです。
(4)次は、元本確定期日です。根抵当権によって担保される債権の確定すべき期日とは、その期日以後に発生した元本債権は担保されないことになる期日のことです。あまり長い期間にわたる拘束を避ける趣旨で5年以内でなければならないときめられています(民法398条の6)。