◎協同組合とは
   

  中小企業は、一般的に規模が小さい、資金調達力や情報収集力が弱い、技術力が低い等、事業経営の上で不利な立場に立たされている場合が少なくありません。また、中小企業は、最近の情報化の進展、国際化、消費者ニーズの多様化・高度化、規制緩和、エネルギー・環境に関する規制強化などにより大きな影響を受けており、これらに対応するため事業活動の再検討や事業の方向転換の必要に迫られるなど、一段と厳しい環境に直面しています。
  中小企業が、このような厳しい環境に対応して新たな発展をしていくためには、個々の企業の自助努力が大切ですが、個々の能力には自ずと限界があります。
 
  そのため、同じような立場にある中小企業者同士で組合をつくり、互いに協力・助け合い、事業経営を充実・強化していくことが最も効果的といえます。同業の中小企業者などが相集まって組合をつくり、生産性の向上を図り価値実現力を高め対外交渉力を強化し、経済的地位の向上を図るため、各種の組合制度が設けられています。
 
  組合の設立に当たっては、中小企業者が行おうとする共同事業の種類・内容によって組合の種類を選ぶことが大切です。
組合を作る効果としては、

@ 取引条件の改善、販売促進、資金調達の円滑化、情報・技術・人材・マーケティング等の経営ノウハウの充実、生産性の向上等により経営の近代化・合理化を図ることができる
 
A 業界のルールの確立、秩序の維持ができ、メンバー企業の経営の安定と業界全体の改善発達を図ることができる
 
B 中小企業者の個々の意見や要望事項を組合でまとめることにより国の施策に反映させることができるとともに、組合を通じて、多くの中小企業施策を利用することができる、ことなどが挙げられます。
 
 
  ◎組合と会社の相違
   

  協同組合を設立しようとする場合、「協同組合」と「会社」との相違については、はっきり理解して頂くことが大切です。
  わが国の企業の形態は、大きく分けて公企業と私企業に分けることができますが、私企業については、さらに個人企業と共同企業に分けることができます。共同企業には、法人格を持つ法人企業と法人格をもたない匿名組合、民法上の組合、権利能力のない社団などの非法人企業があります。

企業形態チャート

  法人企業には、営利法人としての会社があり、公益法人としての社団法人、財団法人、特定非営利活動法人(NPO法人)、そして、営利法人と公益法人の中間に位置づけられる中間法人としての協同組合等があります。
 
  協同組合と会社(代表的なものとして「株式会社」)は、ともに法人であり管理面等で多くの類似点をもっていますが、次のとおり、理念や性格の上で異なる点が多くあります。
 
  第1に、株式会社は資本中心の組織であるのに対し、組合は組合員という限定された人を組織の基本としています。組合では、組合員1人の出資額が原則として総額の4分の1までに制限されていますが、会社にはそのような制限はありません。
 総会における議決権・選挙権は、会社では各株主がもっている株式数に比例した数となるため、多数の株式を所有する株主の意向による会社運営がなされますが、組合では各組合員の出資額の多少にかかわらず1人1票となっています。
 
  第2に、会社は利潤をあげて株主に利益を配当することを目的とする営利法人ですから配当は無制限に行えますが、組合は相互扶助を目的とする中間法人であり、組合事業による剰余金を配当する場合には、各組合員が組合事業を利用した分量に応じて配当する事業利用分量配当を重視して行うことが配当の基準となっています。また、出資額に応じて行う配当は、年1割までに制限されています。
  ここでいう相互扶助とは、中小企業者が組合を結成し、協同してより大きな目的に取り組み、その目的を達成するために有利な共同事業を行い、各組合員が共同事業を利用することによって組合員の利益を増進するという関係をいいます。この相互扶助こそ組合を貫く根本精神です。
 
  第3に、組合は組合員が自ら組合事業を利用することにより、組合員の事業に役立つことを目的としていますが、会社にはこのようなことはありません。組合は、組合員の事業を共同事業によって補完することを目的としており、その事業は組合自身の利益追求ではなく、組合員に直接事業の効果を与えることを目的として行われます。また、組合の事業活動が特定の組合員の利益のみを目的として行われることは、相互扶助の観点から原則として許されません。
  
  第4に、会社は資本の論理による経済合理性一筋ですが、組合は経済合理性の追求とともに、人間性を尊重し、不利な立場にある組合員の経済的地位の向上を図るための組織です。会社にはない制度上の特典が組合に与えられているのはこのためです。



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