年頭御挨拶

 石川県中小企業団体中央会
 会長  安田 隆明   


「衝撃吸収力」という力を求めて

 多難にして、激動する世情の中に在りながらも無事越年し、ここに新春を迎え
ました。
 お互いによろこびを分かち合い、その間における行政当局をはじめ、会員諸賢
の御指導、御協力に感謝し、年頭の御挨拶を申し上げます。
 申し上げるまでもなく旧年は新世紀の幕明けとして夢と希望を抱き新風を期待
した迎春でありました。
 然し、事志に反し、予期せざる人災と天災の多発による異常な越し方でもあり
ました。
 人災とは米中枢同時テロ事件をはじめ、狂牛病、牛乳中毒事件等であり、天
災とは、台風十五号、三宅島噴火による被災等であり、就中、テロ事件は長期
不況を更に加速し、財政負担を加重するため社会、経済環境の一層不安不透
明な事態を招来するに至りました。
 人災を怨み(にくみ)、天災を恐れる年でもありました。
 一方内政における構造改革政策は、賢人による賢策として、これを歓迎しなが
らも我々中小企業に対する組織金融機関であり政府系金融ネットとして緊要不
可欠な商工中金の民営化等、政策視点を異にする問題提起への対応等、百家
争鳴の年でもありました。
 この天災と人災は不況を加速せしめたものの、その根源はバブル崩壊の根の
深さと、内外経済環境の変化を含めた構造的要因に在り、嘗て経験した循環型
不況とは異質のものであることは御見承の通りであります。
 経済環境という土俵そのものが変わり、活動する舞台も変わりました。
 これに対応するため、中小企業基本法も改正され、我々中央会に対する新指
針も提示されました。
 そこには意識改革と、創造という経済理念が求められております。
 「創造」のためには「何を為し何を為し得べきか」が、我々に課せられた使命で
あり、中央会も常にこれを念頭に抱きながら思考し精進して参りました。
 然し、「創造」とは古くして新しい言葉でもあります。  その語例には人夫々に
理解する処は異なるものの、海外との通商協定の折、時折り聞かされた言葉に
「日本の経済力には素晴らしい衝撃吸収力があり一時の衝撃にしてこれを了と
することを要求・・・」との要求後そのものと理解して参りました。
 「衝撃吸収力」とは土木工学等に共通する言葉でありますが、経済用語として
聞かされたのはかつての日米繊維協定やウルグアイラウンドの折にも報道され
た言葉でもあります。
 市場開放、不況、改革等は共に我々中小企業にとっては厳しい衝撃でありま
す。
 我々中小企業は、この衝撃を吸収し、これを消化し、新たに創造し道を拓く潜
在的な力を保有、産業構造の主役として今日に至っていることは事実でもありま
す。
 我々人体は吸収力と消化力の機能により生命を維持して参りました。
 企業体も生きる限り人体と変わる処はありません。
 今日我々はあらゆる衝撃を受けつつあります。
 吸収力と消化力の機能如何が問われていることと理解しております。
 然し、阪神大震災という衝撃に対し工法に限界があり、被災を吸収しての耐震
補強の工事(消化)を行いました。
 我々中小企業にも自らその体力に限界があり、そこには支援施策も講ぜられ
つつあります。
 今求められているのは、行政の補強支援は当然のことながら、自らの吸収力
と消化力であり、中央会も指針を吸収しこれが対応(消化)に精進しております。
 限界のある体力にはこれを補強するための組織力の吸収力と消化力の緊要
性を痛感する年頭の所感でもあります。


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