◎ 第162回通常国会で成立した主な法律について
第162回通常国会は、本年1月21日に召集され、衆議院の解散により、8月8日に閉会した。同国会では、163件の法律案(継続法案を含む)が提出され、96件が成立した。 同国会で成立した主な法律及びその概要は以下のとおりである。
〔成立した主な法律〕
〔概 要〕
1.平成十六年度分として交付すべき地方交付税の総額の特例に関する法律(平成17年 法律第1号)
平成16年度の補正予算により増額された同年度分の地方交付税の額について、当該額の一部を平成17年度分として交付すべき地方交付税の総額に加算して交付することができることとしたもの。
2.地方税法等の一部を改正する法律(平成17年法律第5号)
現下の経済・財政状況等を踏まえつつ、持続的な経済社会の活性化を実現するためのあるべき税制の構築に向けた改革の一環として、定率減税の縮減、所得譲与税の増額、法人事業税の分割基準の見直し等の措置を講ずるほか、非課税等特別措置の整理合理化等を行うこととし、併せて国有提供施設等所在市町村助成交付金等について所要の改正を行ったもの。
3.公共工事の品質確保の促進に関する法律(平成17年法律第8号)
公共工事の品質確保が、良質な社会資本の整備を通じて、豊かな国民生活の実現及びその安全の確保、環境の保全(良好な環境の創出を含む。)、自立的で個性豊かな地域社会の形成等に寄与するものであるとともに、現在及び将来の世代にわたる国民の利益であることにかんがみ、公共工事の品質確保に関し、基本理念を定め、国等の責務を明らかにするとともに、公共工事の品質確保の促進に関する基本的事項を定めることにより、公共工事の品質確保の促進を図り、もって国民の福祉の向上及び国民経済の健全な発展に寄与することを目的としたもの。
4.地方交付税法等の一部を改正する法律(平成17年法律第12号)
地方財政の収支が引き続き著しく不均衡な状況にあること等にかんがみ、地方交付税の総額の確保に資するため、平成17年度分の地方交付税の総額の特例措置を講ずるとともに、平成19年度から平成33年度までの間における一般会計から交付税及び譲与税配付金特別会計への繰入れに関する特例等を改正するほか、各種の制度改正等に伴って必要となる行政経費の財源を措置するため地方交付税の単位費用を改正するとともに、公営企業金融公庫納付金制度を延長し、平成17年度において行われた義務教育費国庫負担金及び公立養護学校教育費国庫負担金の見直しに伴い、税源移譲予定特例交付金の拡充を図る等の措置を講じたもの。
5.介護保険法施行法の一部を改正する法律(平成17年法律第20号)
介護保険法の施行の日前に市町村の措置により特別養護老人ホームに入所した要介護被保険者に対して講じられている施設介護サービス費に係る経過措置について当該経過措置の期間を5年間延長する等の措置を講じたもの。
6.所得税法等の一部を改正する法律(平成17年法律第21号)
現下の経済・財政状況等を踏まえつつ、持続的な経済社会の活性化を実現するためのあるべき税制の構築に向けた改革の一環として、定率減税を縮減する改正、特定管理株式が価値を失った場合の譲渡所得等の課税の特例の創設等の金融・証券税制の改正、非居住者等の組合事業から生ずる利益に対する源泉徴収制度の創設及び外国子会社合算税制の見直し等の国際課税の改正並びに中小企業等基盤強化税制の対象に、「中小企業の新たな事業活動の促進に関する法律」に係る措置を追加する等の中小企業関係税制の改正を行うとともに、所得税の寄付金控除の控除限度額の引上げ、民事再生等の場合の資産評価損益と欠損金の損金算入等に関する措置の改正、教育訓練費が増加した場合の特別税額控除制度の創設、登録検査機関等の登録等に対し登録免許税の負担を求める改正等を行うほか、共同で現物出資をした場合の課税の特例の廃止等、既存の特別措置の整理合理化を図り、併せて住宅用家屋に係る所有権の保存登記等に対する登録免許税の特例等期限の到来する特別措置について実情に応じ適用期限を延長する等、所要の措置を一体として講じたもの。
7.国の補助金等の整理及び合理化等に伴う義務教育費国庫負担法等の一部を改正する法
律(平成17年法律第23号)
国及び地方公共団体を通じた財政改革のための国の補助金等の整理及び合理化等に伴い、平成17年度における暫定措置として公立の義務教育諸学校の教職員の給与等に要する経費の国庫負担額を減額するほか、経済的理由によって就学困難な児童及び生徒について学用品等を給与する場合における国の補助の対象を要保護者に限定する等、文部科学省関係の補助金の整理及び合理化を図
ったもの。
8.地域再生法(平成17年法律第24号)
近年における急速な少子高齢化の進展、産業構造の変化等の社会経済情勢の変化に対応して、地方公共団体が行う自主的かつ自立的な取組みによる地域経済の活性化、地域における雇用機会の創出その他の地域の活力の再生を総合的かつ効果的に推進するため、その基本理念、政府による地域
再生基本方針の策定、地方公共団体による地域再生計画の作成及びその内閣総理大臣による認定当該認定を受けた地域再生計画に基づく事業に対する特別の措置並びに地域再生本部の設置について定めたもの。
9.不動産登記法等の一部を改正する法律(平成17年法律第29号)
土地の筆界の迅速かつ適正な特定を図り、筆界をめぐる紛争の解決に資するため、登記官が、土地の所有権登記名義人等の申請により、筆界調査委員の意見を踏まえて土地の筆界を特定する制度
を創設するほか、司法書士及び土地家屋調査士の業務について筆界の特定についての手続の代理及び民間紛争解決手続の代理に関する規定を整備する等の措置を講じたもの。
10.中小企業経営革新支援法の一部を改正する法律(平成17年法律第30号)
近年の経済的環境の変化を踏まえ、中小企業の新たな事業活動を総合的に促進するため、経営革新に対する支援措置に加え、創業及び新たに設立された企業の事業活動の促進並びに異分野の中小企業の連携による新事業分野開拓(「新連携」)の促進を図る制度を創設する等の所要の措置を講じたもの(→「中小企業の新たな事業活動の促進に関する法律」に名称変更)。
11.民間事業者の能力を活用した市街地の整備を推進するための都市再生特別措置法等
の一部を改正する法律(平成17年法律第34号)
民間事業者の能力を活用した市街地の整備を推進するため、国土交通大臣の認定を受けた民 間都市再生整備事業計画に係る都市開発事業に対する民間都市開発推進機構による支援措置 の創設、宅地について所有権を有する者が議決権の過半数を保有する等の要件に該当する株 式会社又は有限会社の土地区画整理事業の施行者への追加、土地区画整理事業を施行する当 該株式会社又は有限会社に対する都市開発資金の無利子貸付制度の創設等の措置を講じたも
の。
12.私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律(平成17
年法律第35号)
公正かつ自由な経済社会を実現するために競争政策の積極的展開を図ることが必要であることにかんがみ、(1)不当な取引制限等に対する課徴金算定率の引上げ等、(2)課徴金減免制度の導入、(3)犯則調査権限の導入等、(4)罰則規定の改正、(5)審判手続等の規定の整備、(6)価格の同調的引上げに対する報告徴収規定の廃止、等を行ったもの。
13.保険業法等の一部を改正する法律(平成17年法律第38号)
経済社会情勢の変化を踏まえ、金融資本市場の構造改革を促進し、保険契約者等の保護の一層の充実を図るため、保険業法の適用範囲及び保険契約者保護制度の見直しを行うとともに、少額短期保険業者の特例の創設、特別勘定で経理された保険契約の更生手続における取扱いの見直し、保険会社の子会社規制の緩和を行う等、所要の措置を講じたもの。
14.有限責任事業組合契約に関する法律(平成17年法律第40号)
個人又は法人が共同して行う事業の健全な発展を図ることが我が国の経済活力を向上する上で重要であることにかんがみ、組合員の責任の限度を出資の価額とする新たな組合契約に関する制度を創設し、組合員の有限責任の担保、これに伴う公示制度の整備及び組合の事業に係る情報開示の充実等の措置を講じたもの。
=「LLP(有限責任事業組合)制度」スタート
15.廃棄物の処理及び清掃に関する法律等の一部を改正する法律(平成17年法律第
42号)
最近における廃棄物の処理をめぐる状況にかんがみ、大規模不法投棄、無確認輸出等廃棄物の不適正処理に対する対応を強化するとともに、より適切な事務処理体制を確立するため、保健所設置市に係る事務の見直し、産業廃棄物管理票制度の強化、無確認輸出に関する未遂罪の創設等の措置を講じたもの。
16.商標法の一部を改正する法律(平成17年法律第56号)
産業競争力の強化と地域経済の活性化を図ることの必要性の増大等にかんがみ、地域の名称を含む商標を保護することにより、地域の産品等についての事業者の信用の維持を図るため、地域の名称及び商品(役務)の普通名称のみからなる商標等について、事業協同組合等によって使用され、一定程度の周知性を獲得している場合に、地域団体商標の商標登録を受けることを可能にする等の措置を講じたもの。
17.地球温暖化対策の推進に関する法律の一部を改正する法律(平成17年法律第61号)
気候変動に関する国際連合枠組条約の京都議定書の発効及び我が国の温室効果ガスの排出の現況にかんがみ、地球温暖化対策の一層の推進を図るため、地球温暖化対策推進本部の所掌事務の追加を行うとともに、特定排出者に係る温室効果ガスの排出量の報告等の措置を講じたもの。
18.下水道法の一部を改正する法律(平成17年法律第70号)
都市における浸水による被害を防止し又は軽減するため、雨水流域下水道の制度を創設するとともに、公共用水域の水質の保全等を図るため、流域別下水道整備総合計画において定めるべき事項として終末処理場から放流される下水の窒素含有量又は燐含有量についての削減目標量等に関する事項を追加し、人の健康に係る被害又は生活環境に係る被害を生ずるおそれがある一定の物質又は油が下水道に流入する事故が発生した場合における応急の措置を義務付ける等の措置を講じたもの。
19.不正競争防止法等の一部を改正する法律(平成17年法律第75号)
我が国産業の国際競争力の強化を図ることの必要性の増大等にかんがみ、知的財産の保護を強化するため、日本国外における営業秘密の不正な使用及び開示等に係る処罰規定並びに他人の商品の形態を模倣する行為等に係る処罰規定を整備するとともに、不正競争を行った者等に対する罰則を強化し、併せて知的財産に係る裁判外紛争解決手続における弁理士の役割を拡充する等の措置を講じたもの。
20.証券取引法の一部を改正する法律(平成17年法律第76号)
最近の証券市場をめぐる情勢の変化に対応し、及び我が国証券市場の国際競争力の向上を図るため、公開買付制度の適用範囲の見直し及び親会社等状況報告書制度の導入並びに外国会社等の英文による開示制度の導入等の措置を講じたもの。
21.介護保険法等の一部を改正する法律(平成17年法律第77号)
高齢化の一層の進展等社会経済情勢の変化に対応した持続可能な介護保険制度を構築するとともに、高齢者が尊厳を保持し、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができる社会の実現に資するため、予防給付の給付内容の見直し、食費及び居住費に係る保険給付の見直し等保険給付の効率化及び重点化、地域密着型サービスの創設等新たなサービス類型の創設、介護支援専門員の資格並びに事業者及び施設の指定等に係る更新制の導入等サービスの質の確保及び向上、障害年金及び遺族年金を特別徴収の対象とする等負担の在り方及び制度運営の見直し等の措置を講じたもの。
22.障害者の雇用の促進等に関する法律の一部を改正する法律(平成17年法律第81号)
障害者の雇用に関する状況にかんがみ、障害者の雇用の促進及びその職業の安定を図るため、精神障害者である労働者に対する雇用義務等及び納付金関係業務に係る規定の適用についての特例を定める等、施策の充実強化を図ったもの。
23.建設労働者の雇用の改善等に関する法律の一部を改正する法律(平成17年法律第84号)
最近における建設業を取り巻く経済社会情勢の変化等にかんがみ、建設業務有料職業紹介事業及び建設業務労働者就業機会確保事業の制度を創設する等の措置を講ずることにより、建設業務に必要な労働力の確保に資するとともに、建設労働者の雇用の安定を図ったもの。
24.流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律(平成17年法律第85号)
最近における物資の流通をめぐる経済的社会的事情の変化に伴い、我が国産業の国際競争力の強化、消費者の需要の高度化及び多様化への対応並びに物資の流通に伴う環境への負荷の低減を図ることの重要性が増大していることにかんがみ、流通業務総合効率化事業について、その計画の認定その実施に必要な関係法律の規定による許可等の特例、中小企業者が共同して行う場合における資金の調達の円滑化に関する措置等について定めることにより、流通業務の総合化及び効率化の促進を図ったもの。
25.会社法(平成17年法律第86号)
社会経済情勢の変化にかんがみ、会社に関する法制について、最低資本金制度の撤廃、会社の機関の設置等における定款自治の範囲の拡大、合併等の組織再編成に関する手続の整備、有限責任社員のみで構成される新たな会社類型(合同会社:LLC)の新設等を行うとともに、国民に理解しやすい法制とするためこれを現代用語の表記によって一体のものとして再編成したもの。
26.会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成17年法律第87号)
会社法の施行に伴い、有限会社法等を廃止し、商法や、「中小企業等協同組合法」及び「中小企業団体の組織に関する法律」を含むその他の関係法律の規定の整備等をするとともに、所要の経過措置を定めたもの。
27.民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律の一部を改正する法律 (平成17年法律第95号)
民間の資金、経営能力及び技術的能力を活用した公共施設等の整備等の一層の促進を図るため、本法の目的として国民に対する低廉かつ良好なサービスの提供を確保することを明記し、基本理念に行政の効率化又は国公有財産の有効利用にも配慮することを定めるとともに、行政財産を、公共施設等と民間施設との合築の場合において選定事業者以外の者に対しても貸し付けることができるようにすること、合築以外の形態による民間施設の併設の場合においても貸し付けることができるようにすること等行政財産の貸付対象を拡充し、併せて民間事業者の選定に当たっての評価方法の明確化等の措置を定めたもの。
28.出入国管理及び難民認定法第二条第五号ロの旅券を所持する外国人の上陸申請の特
例に関する法律(平成17年法律第96号)
国際交流の進展に伴い、出入国管理及び難民認定法第2条第5号ロの旅券を所持し、観光その他の目的で本邦に短期間滞在しようとする外国人の上陸手続の円滑化を図るため、その上陸の申請に係る特例措置を定めたもの。
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