13.下請企業対策
1.下請中小企業の振興 (1) 下請中小企業振興法に基づく支援 下請中小企業振興法は、[1]下請中小企業の振興を図るため親事業者と下請事業者が目指すべきガイドラインとしての「振興基準」、[2]振興基準の内容を具体的に組合が中心となって実施する「振興事業計画制度」、[3]下請取引の円滑化を図るための「下請企業振興協会の設置」等について定めており、これによって下請企業の振興が図られています。 [1]振興基準 振興基準の主な内容として、[1]下請事業者の生産性の向上及び製品の品質又は性能の改善(下請事業者の努力、親事業者の協力など)、[2]親事業者の発注分野の明確化及び発注方法の改善(発注分野の明確化、長期発注計画の提示及び発注契約の長期化、発注の安定化、納期・納入頻度の適正化、発注手続事務の円滑化、設計・仕様書の明確化、取引停止の予告など)、[3]下請事業者の設備の近代化、技術の向上及び事業の共同化(設備の近代化、技術の向上、経営管理等の近代化、事業の共同化、情報化への積極的な対応など)、[4]単価の決定の方法、納品の検査の方法その他取引条件の改善(単価の決定の方法の改善、納品の検査方法の改善、原材料の支給及び設備等の貸与の方法の改善、下請代金の支払方法の改善など)、[5]下請事業者の組織化の推進(他の下請団体との連携、親事業者の下請事業者の組織化への協力など)、[6]その他下請中小企業の振興のために必要な事項(下請事業者の自主性の尊重、基本契約の締結などの一般的留意事項、国際化の進展、親事業者の合理化の進展などの最近の経済環境の変化に伴う留意点)からなっています。 [2]振興事業計画制度 親事業者の属する業種が、政令により指定された業種(金属工作機械製造業、重電機器製造業、家電機器製造業、自動車及び同部品製造業、船舶及び船舶用機関製造業の5業種)であり、その業種に直接又は間接に関連する下請企業で組織する事業協同組合とその親事業者が協議し、参加下請中小企業の体質改善等を内容とする「振興事業計画」を作り、国の承認を得てこれを実施する制度です。この計画の実施に対しては、金融上の助成措置として[1]下請中小企業対策貸付(中小企業金融公庫)、[2]商工中金の資金の活用、[3]高度化事業貸付(中小企業事業団)などがあるほか、税制上の措置としては[1]特別土地保有税の非課税制度、[2]事業所税の非課税制度があります。 [3]下請企業振興協会(財団法人石川県中小企業振興協会 下請振興課) 下請企業振興協会は、[1]下請取引の斡旋、[2]下請取引の経営等に関する相談・指導、[3]下請取引に関する苦情・紛争等の処理、[4]下請中小企業振興のための情報の収集及び提供などを行っており、47都道府県に設立されています。 また、都道府県下請企業振興協会の中核機関として、(財)全国下請企業振興協会があり、広域的かつ組織的な取引の斡旋体制の強化を図るとともに業種別の下請取引標準約款の作成及びその普及を行うなど、下請取引の近代化を推進しています。平成9年度より、インターネットのホームページを開設し、親企業向けに下請企業に関する情報を常時発信し、下請企業の販路拡大を図るインターネット利用下請企業情報提供事業を実施している。なお、わが国下請企業と進出外国企業の新たな取引関係の開拓のための情報提供等の事業を行っている国際下請取引情報センターが(財)全国下請企業振興協会の中に設置されています。
(2) 下請中小企業構造調整対策 円高を契機とした親企業の構造調整が進む中で、下請中小企業が十分対応できるように、次のような構造調整の円滑化を図るための施策が講じられており、下請中小企業者を強力に支援しています。
[2]中小企業体質強化資金助成制度 親事業者の構造調整に伴い影響を受ける下請中小企業者(下請企業振興協会の認定を受けることが必要です)の経営の合理化・近代化等又は新分野進出等の自立化の推進等による経営基盤の強化を支援するため、中小企業体質強化資金助成制度の一環として、「下請中小企業対策融資」を設け、民間金融機関及び商工中金から低利資金が受けられます。 [3]下請中小企業対策貸付制度 「下請中小企業振興法」に規定されている振興事業計画に参加している下請中小企業者や、振興事業計画に参加していなくても「下請中小企業振興法」の指定業種に属する親事業者の事業活動の変更等により影響を受ける下請中小企業者及び特定下請組合を対象として、中小企業金融公庫より長期安定資金の貸付を行っています。
2.下請取引の適正化 (1) 下請代金支払遅延等防止法による下請取引の適正化 下請代金支払遅延等防止法は、下請代金の支払遅延などを防止し、下請取引の適正化を図るため、親事業者に対し守るべき義務と禁止行為を定めています。親事業者が守るべき義務は、具体的には、[1]下請事業者から製品等を受領した日から起算して60日の期間内で、かつ、できる限り短い期間を下請代金の支払期日と定めなければならない、[2]下請事業者に発注する際には、発注の内容、下請代金の額、支払期日、支払方法等を記載した書面を下請事業者に交付しなければならない、[3]下請事業者からの給付の受領日、下請代金の支払日等下請取引の経過を記載した書類を作成し、それを2年間保存しなければならない、[4]下請代金を支払期日までに支払わなかったときは、下請事業者からの給付を受領した後、60日を経過した日から支払をする日までの期間について、遅延利息(年率14.6%)を支払わなければならないの4項目です。親事業者の禁止行為としては、下請事業者の利益を不当に害するような、[1]発注した製品等の受領拒否、[2]下請代金の支払遅延、[3]下請代金の減額、[4]いったん受領した製品等の返品、[5]下請代金の買いたたき、[6]下請事業者にとって不要な物品の購入強制、[7]中小企業庁又は公正取引委員会への訴えに対する報復措置、[8]有償支給原材料等の対価の早期決済、[9]割引困難な手形の交付などが定められております。親企業がこれらの義務や禁止行為に違反した場合には、公正取引委員会の改善勧告があり、勧告に従わない場合は社名の公表、罰則の適用などによって実効の確保が図られています。 なお、下請代金支払遅延等防止法については、「下請代金支払遅延等防止法第4条第1項に関する運用基準」が定められており、親事業者の禁止行為について、具体的な事例が示されています。 (2) 建設業法に基づく下請取引の適正化 「建設業法」により元請負人の不公正な取引行為を規制しています。具体的には、[1]不当に低い請負代金の禁止、[2]不当な使用資材等の購入強制の禁止、[3]下請代金の支払、[4]検査及び引渡し、[5]特定建設業者の下請代金の支払期日等について元請負人に義務を課しています。さらにこの法律の実効を確保するため、[1]報告の徴収及び検査、[2]建設業者又は建設業者団体に対する指導、助言及び勧告、[3]公正取引委員会への措置請求、[4]罰則などの措置が講じられています。 (3) 下請取引適正化の啓蒙、普及等 下請取引の適正化を推進するため、機会あるごとに「下請代金支払遅延等防止法」「下請中小企業振興法」に基づく振興基準等の趣旨の徹底が図られていますが、特に年末の金融の繁忙期には毎年、親事業者・親事業者団体等に対し通商産業大臣及び公正取引委員会委員長の連名で通達が出され、その徹底が図られています。 また「下請代金支払遅延等防止法」に基づく親事業者の遵守事項及び「下請中小企業振興法」に基づく振興基準のより一層の周知徹底を図るため、毎年11月を「下請取引適正化推進月間」と定め、親事業者に対する同法の意識向上が図られています。 さらに、親事業者の外注担当者等を対象に適正な下請取引を行う上で必要な下請代金支払遅延等防止法等の関係法令や具体的事例について理解を深めるための「下請取引改善講習」を毎年全国各地で実施しています。 |