5.中小企業のための税制
1.個人事業者のための措置
(1)青色申告事業専従者の完全給与制等
事業主の家族が事業に従事している場合、家族に支払った給与が、その労務の対価として相当であると認められるときは、青色申告者に限り、全額必要経費に参入できます。
なお、白色申告者の場合は、所得税、住民税、事業税それぞれにおいて、専従配偶者については86万円、それ以外の専従者については1人50万円の定額控除ができます。
(2)青色申告特別控除
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事業所得又は不動産所得を生ずる事業を営む青色申告者で、これらの所得に係る取引を、正規の簿記の原則に従い記録している者は、45万円又は事業所得・不動産所得の合計額のいずれか低い額の所得控除が認められます。 |
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[1]以外の青色申告者については、10万円又は事業所得・不動産所得の合計額のいずれか低い額の所得控除が認められます。 |
(3)事業税の事業主控除
事業税の課税対象から 270万円を控除することが認められています。
(4)小規模企業共済掛金控除
小規模企業共済制度の第1種共済掛金は、全額所得控除ができるとともに、共済金は退職所得扱いとなっています。なお、平成元年度に共済金の分割支給制度が導入され、第1種共済契約に基づいて給付される一定の分割共済金については雑所得扱いとして、公的年金等控除が認められています。また、第2種共済掛金は生命保険料控除として一定額の所得控除が認められます。
(5)中小企業の事業承継円滑化のための措置
個人事業者が事業の用に供していた宅地、居住の用に供していた宅地等を取得した者の相続税の課税価格に算入すべき価額は、200uまでの部分については、被相続人と同居していた親族が引き続き居住している場合、被相続人が営んでいた事業を引き続き営んでいる場合に限り、通常の方法により評価した金額から事業用、居住用ともに80%減額されます。ただし、前述の2つの場合以外の場合には事業用、居住用ともに50%が減額されます。
2.中小法人のための措置
(1)法人税の軽減税率
資本金1億円以下の中小企業の法人税率は、年所得 800万円以下の部分が25%(年所得 800万円超の部分 34.5%)に軽減されています。
(2)同族会社の留保金課税
同族会社の留保金については、通常の法人税のほか特別の加算課税があります。
(3)貸倒引当金の特例
資本金1億円以下の中小法人は、業種ごとの法定繰入限度額の16%増しの繰入れができます。
(4)交際費の損金算入
交際費は一般に損金に算入できませんが、中小法人は次の区分により、一部について損金算入することができます。
・資本金1,000万円以下の法人―年400万円までのうち80%
・資本金5,000万円以下の法人―年300万円までのうち80%
(5)事業税・住民税の軽減
事業所税については所得金額、住民税については資本金額及び従業員数によって軽減税率が適用されます。
(6)非上場会社である中小企業の事業承継円滑化のための措置
中小企業の事業承継を円滑にするために、取引相場のない同族会社の株式を相続した同族株主の株式評価に当たっては、純資産価額方式又は純資産価額方式・類似業種比準方式の併用による評価の選択適用が認められている他、類似業種比準方式における類似業種の採り方についても幅のある選択が認められています。
3.協同組合等のための措置
中小企業者の組合である事業協同組合や商工組合などの組合に対しては、組織化促進のために次のような優遇措置がとられています。
(1)法人税率が所得額にかかわらず25%に軽減される(企業組合・協業組合を除く。以下について同じ。)
(2)事業利用分量配当の損金算入が認められる
(3)加入金の益金不算入が認められる
(4)組合が所得を留保した場合に、累積留保額が出資総額の4分の1に達するまでは、毎事業年度の留保所得の 100分の32(出資金額1億円超の組合で利益積立金額が 2、500万円を超える留保所得部分については 100分の21、1億円を超える留保所得部分については 100分の15、2億円を超える留保所得部分については 100分の11)を損金算入することができる(事業協同組合、事業協同小組合、出資商工組合、出資環境衛生同業組合及びそれらの連合会(出資金が1億円を超える組合は、設立後5年以内の事業年度に限る)に限る)
(5)貸倒引当金の特例
企業組合、協業組合を除く協同組合等は、法定繰入限度額の16%増しの繰入れができます。
(6)法人税の中間申告書の提出が不要
(7)出資証券、貯金及び預金の各通帳、受取書などに対する印紙税が非課税
(8)組合の根拠法に基づく登記に対する登録免許税が非課税
(9)非出資組合の非収益事業から生じた所得について、法人税、事業税などが非課税
(10)事業税の税率が軽減
(11)一定の共同施設に対する不動産取得税、固定資産税が非課税
4.近代化促進などのための特別措置
(1)中小企業者(組合)の機械等の特別償却
230万円以上の機械及び装置について、事業供用年度に取得価額の 100分の11に相当する金額の特別償却ができます。
(2)中小企業新技術体化投資促進税制(メカトロ税制)
中小企業者が、電子機器利用設備の取得等をした場合には、初年度に取得価額の30%の特別償却又は7%の税額控除(当期の税額の20%相当額を限度)の選択適用が認められ、リース資産については、リース料の60%相当額について7%の税額控除を行うことが認められています(ただし、資本金3,000万円超の法人(組合を除く)に対しては取得分の税額控除は不適用)。
(3)中小企業等基盤強化税制
[1]「中小企業における労働力の確保のための雇用管理の改善の促進に関する法律」に基づく組合及び組合員、[2]「特定産業集積の活性化に関する臨時措置法」に基づく中小企業者、[3]「特定中小企業者の新分野進出等による経済の構造的変化への適応の円滑化に関する臨時措置法」に基づく特別中小企業者、[4]卸売業、小売業、飲食店業及び特定サービス業を営む者並びに、[5]「特定農産加工業経営改善臨時措置法」に規定する中小農産加工業者が、事業基盤の強化に資するための設備又は労働時間の短縮等に資する機械・装置を取得した場合には、取得価額の30%の特別償却又は7%の税額控除(当期の税額の20%相当額を限度)の選択適用が認められています。また、リース資産については、リース料の60%相当額について7%の税額控除を行うことが認められています。なお、本制度は「中小企業創造的事業活動促進法」の設備投資減税との選択適用となります。
(4)中小企業技術基盤強化税制
中小企業の技術基盤を強化するため、中小企業者などの試験研究費について、その6%相当額の税額控除(当期の税額の15%相当額を限度)をすることができます。(増加試験研究費の税額控除との選択適用が認められています。)
(5)中小企業の創造的事業活動の促進に関する臨時措置法関係の措置
中小企業の創業及び技術に関する研究開発等を支援するため、「中小企業の創造的事業活動の促進に関する臨時措置法」が平成7年4月14日に施行され、各種の税制措置が講じられていますが、平成9年6月5日に同法が改正され、エンジェル(個人投資家)税制が創設されました。
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エンジェル(個人投資家)税制
創業5年未満で、売上高に対する試験研究費等の割合が3%を超える等一定の要件を満たす中小企業者等に対し、個人投資家が株式投資を行い、その株式について譲渡損失が発生した場合には、その譲渡損失について、個人投資家は3年間にわたって繰越控除の特例等が認められています。
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[2] |
設備投資のための特例措置
ア.売上高に対する研究開発費比率が3%を超える中小企業者、イ.創業5年未満の製造業、印刷業、ソフトウェア業及び情報処理サービス業を行う中小企業者、ウ.同法に基づく認定研究開発等計画に従って研究開発事業を実施する中小企業者が、取得(リースも含む)する 250万円以上の機械・装置については7%の税額控除(当期の税額の20%相当額を限度)又は30%の特別償却が認められます(中小企業等基盤強化税制との選択適用となっています)。
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欠損金の繰越期間の延長
同法に基づく認定研究開発等事業計画に従って、研究開発事業を実施する中小企業者の欠損金については、7年まで繰り越すことができます。
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試験研究賦課金の任意償却と増加試験研究費の税額控除
同法に基づく認定研究開発等事業計画に従って、組合等が生産・販売又は役務の提供の技術に関する研究開発等事業を実施する場合に、その構成員が支出した負担金については、その支出相当額までの任意償却が、また、試験研究費が増加した場合又は中小企業技術基盤強化税制の税額控除の適用が認められます。
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[5] |
資産の圧縮記帳
組合等が、同法に基づく認定研究開発等事業計画に従って、取得する試験研究用資産を、構成員の負担金により取得した場合には、1円までの圧縮記帳を行うことができ、また、その圧縮した額の損金算入が認められます。
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(6)特定中小企業者の新分野進出等による経済の構造的変化への適応の円滑化に関する臨時措置法関係の措置
[1] |
設備投資のための特例措置
営んできた事業の縮小が確実であると都道府県知事が認めたもので、同法に基づく承認計画に従って中小企業者が取得(リースも含む)した機械及び装置(製作した場合も含む)については、初年度に7%の税額控除(当期の税額の20%相当額を限度)又は30%の特別償却が認められます。
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[2] |
試験研究賦課金の任意償却と増加試験研究費等の税額控除
同法に基づく承認新分野進出等計画等に従って、組合等が新商品又は新技術の研究開発事業を実施する場合に、その構成員が支出した試験研究のための負担金については、支出相当額までの任意償却が、また、試験研究費が増加した場合又は中小企業技術基盤強化税制の税額の特別控除の適用が認められます。
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[3] |
賦課金により取得した資産の圧縮記帳
組合等が同法に基づく承認新分野進出等計画に従って、新商品又は新技術の研究開発に関する事業として行う試験研究の用に直接供する固定資産を構成員の負担金により取得した場合には、1円まで圧縮記帳を行うことができ、また、圧縮額の損金算入が認められます。
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[4] |
欠損金の繰戻しによる還付
平成12年3月31日までの間に終了する各事業年度において欠損金が生じた場合、欠損金が生じた事業年度前1年間の法人税額の還付を請求することができます。
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[5] |
特定事業用資産の買換えの場合の課税の特例
同法に係る特定の資産の買換えについては、課税繰延割合を80%とする圧縮記帳を行うことが認められます。
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(7)中小企業近代化促進法関係の措置
近促法に基づき、商工組合等が計画し推進する構造改善事業への参加組合員又は商工組合等については、次の特別措置があります。
[1] |
機械・装置・工場用建物その他について、5年間、普通償却限度額の100分の18の割増償却
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試験研究費賦課金の任意償却
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増加試験研究費又は中小企業技術基盤強化税制の税額控除
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特定の事業用資産の買換えの場合の圧縮記帳
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賦課金により取得した試験研究用資産の圧縮記帳
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特別土地保有税及び事業所税の非課税 |
(8)公害防止・リサイクルのための特別措置
[1] |
特別償却
一定の公害防止用施設を取得した場合には、取得価額の100分の18(廃棄物再生処理用設備は 100分の19)の特別償却ができます。
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固定資産税の軽減
公害防止施設の種類・内容により6分の1、3分の1又は3分の2等の軽減の措置があります。
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(9)エネルギー需給構造改革推進投資促進税制
中小企業者等が一定の要件の下にエネルギー有効利用等に寄与する減価償却資産を取得した場合には、初年度に取得価額の30%の特別償却又は取得価額の7%の税額控除(当期税額の20%相当額を限度)の選択適用が認められます。
(10)中小企業高度化事業についての特別の措置
中小企業者の組合等が高度化事業を実施する場合には、次のような優遇措置が講じられています。
[1] 集団化、商店街整備計画、店舗集団化計画及び共同店舗等整備計画等のために土
地等を譲渡した場合の譲渡所得の特別控除
[2] 事業用資産の買換えの場合の圧縮記帳等
[3] 団地用土地又は建物の分譲の場合の登録免許税率の軽減
[4] 中小小売商業用の共同利用施設及び店舗用・倉庫用建物等の特別償却
[5] 共同施設用建物の不動産取得税の軽減
[6] 組合員に譲渡する場合の不動産取得税の免除
[7] 固定資産税の課税標準の特例
[8] 特別土地保有税及び課税基準の特例
(11)試験研究費に対する措置
試験研究費がある場合又は試験研究費が増加した場合は、税額控除を行うことが認められます。
(12)中小企業退職金共済制度の掛金
事業主負担が全額損金となります。
(13)中小企業倒産防止共済制度の掛金
納付した共済掛金が全額損金となります。
(14)登録免許税の軽減
これまで紹介したほか、商工中金又は信用保証協会の抵当権設定登記について税率が軽減されています。
(15)特別土地保有税の特例
これまで紹介したほか、公害防止用の土地、環境事業団より譲り受けた土地、下請中小企業振興法に基づく共同利用施設用の土地、中小企業近代化促進法の構造改善計画に基づく構造改善事業用の土地、特定中小企業集積の活性化に関する臨時措置法に基づく特定分野への進出後の事業の用に供する土地、中小企業流通業務効率化促進法 に基づく流通業務効率化事業の用に供する土地なども非課税となっています。また、一定面積以下の土地についても非課税となります。
(16)事業所税の特例
床面積 1,000u(新増設の場合は 2,000u)以下及び従業員100人以下の場合は免税となるほか、特別の政策の対象となる事業所、協同組合等の事務所等は課税が減免されます。
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